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「幼年時代」#3
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「幼年時代」#3

室生犀星

室生犀星「幼年時代」 #3

 畠は、一様に規則正しい畝や囲いによって、たとえば玉菜の次に豌豆があり、そのうしろに胡瓜の蔓竹が一と囲い、という順序に総てが整然とした父の潔癖な性格と、むかし二本の大小を腰にした厳格さの表われでないものはなかった。父の野良犬を追うとき、小柄でも投げるように、小石は犬にあたった。または烏などを趁う手つきが、やはり一種の形式的な道場癖をもっていて、妙に私をして感心させるような剣術を思わせるのであった。
 父の居間には、その襖の奥や戸棚には、驚くべき沢山の刀剣が納められてあった。私はめったに見たことがなかったが、ぴかぴかと漆塗の光った鞘や、手柄の鮫のぽつぽつした表面や、× に結んだ柄糸の強い紺の高まりなどを、よく父の顔を見ていると、なにかしら関聯されて思い浮ぶのであった。
 それに父…

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